芸術の秋。今年も豆田町の天領日田資料館にて、日田市所蔵作品展『みんなの美術館』が始まった。美術館がない町でもできることを模索し、いろんな方々の協力のおかげで実現しているこの催しも6年目に突入。これまでも、ひとつのメイン作品を決め、その作品に合わせた展開をし、来場者には好きな作品を窓口で聞いてきた。そうすることで、所蔵作品がしっかり記憶にインプットされていくのではないかという想いはあったが、6年が経ち、来場していただいたみなさんとお話しすると、いろんな作品をよく覚えてくれている。映画館に戻ってきてわざわざ感想を伝えてくれる人も増えた。何より、毎年こうやってしっかりお披露目させてもらえるのなら寄贈したい、という問い合わせも増え、文化の渦が生まれつつあることがとても嬉しい。
「ただ観るのではなく、よく観ること」。
数値に表れないこのちょっとした意識がとても大切なのだろう。こういう部分が文化活動の核になる価値だと思う。しかしそれは数値化できず見えない部分でもあり、なかなか評価しにくいものだが、こんな風に時が経つほどにしっかり結果が出てくることなのかもしれず、ホッとしていると同時に、これからもこの部分を推し進めようと思えて、結局こちらが励まされている。
今回初めて、日田を代表する画家:岩澤重夫コーナーを設けた。メインビジュアルでもある若き頃の抽象画『直』から、次第に具象に変わってゆく様子を表現したかったが、それだけでは何かグッとこず、何度も資料を眺め直していた。その中で、スタイルは抽象から具象に変化していても、変わらないイメージが岩澤さんの中には常にあったのではないか?と思わせる作品たちが浮かび上がってきた。『直』が瀧になっていく様を眺めていると、岩澤さんの姿も浮かんできて、ドキッとした。
他にも、いろんな画家が描く花のコーナーや、昨年の人気ベストテン作品なども展示しているので、ゆっくりじっくり眺めて欲しいです。画家が膨大な時間をかけてこの一枚の絵を描く理由を想像しながら観ても、きっと素敵な時間になるのではないでしょうか。そして美術館を出ると、不思議と来た時より美しく見える豆田町。それは、自分の目や意識が浄化されたのかもしれないですね。