陽気が温かく心も少し軽くなる季節、この時期にはやはり桜の花を見たくなるもので今年はどこで眺めようかと毎年の事ながら考える。日田市内にはあちらこちらに花見のスポットはあるものの町外れにたくさんの桜が咲き誇る萩尾公園は例年たくさんの家族連れで賑わっている。萩尾稲荷の鳥居を横目に過ぎると日頃は静かな萩尾公園もこの日ばかりはお祭りのようである。
貯水池をぐるりと取り囲むように植えられた桜の花はどこも満開でレジャーシートを広げた花見客が自然と集まりそのような状態になっているのだ。この萩尾公園も日田市民の心に残る思い出の多い場所だ。昔は遠足でよく歩かされたのを思い出す。公園の中にはローラー式の長い滑り台が在ったり、コンクリートブロックの迷路等が在ったのを思い出す。
今は埋蔵文化財センターとなっているが、昔はピノキオスクールと言う名前で木工体験やパソコンの学習が出来ていたのも懐かしい限りだ。スポーツをやっていた人達では隣のグラウンドでの思い出もあるだろう。
そう考えると、この萩尾公園は昔の事を思い出しながら今を楽しめる場所なのかもしれない。そんなことを考えながら僕は満開の桜を見ながら公園を歩いて回った。春の陽気と桜のせいか、はたまた人々の笑い声のせいかその全ての思い出が美しかったように思えてきた。
昔、初日の出を見るのだと言って大晦日にこの公園に登り、朝まで友達たちと寒い中過ごした日の事や貯水池で魚釣りをしていて悪ふざけから池へ落ちたことなどのくだらない事達が掛け替えのないものに感じる。僕はひょっとすると花見を口実にこの公園へ思い出に会いに来たのかもしれない。
賑やかな光景を横目に僕は静かに心地よく桜の木の下をふらふらと歩いていく。なんだか緩やかに感じる時間の流れに身をまかせてふらふらと、暖かな風に吹かれながらまたふらふらと。