リーマンショックの余波が日本にも大きな影を落とした2009年6月に2度閉館したこの映画館を引き継ぐ形で立ち上げ、16年も続けられていることにビックリしている。全国各地に元々あった町の映画館がシネコンに変わり消滅していく中、人口6万人の小さな町に映画館が存続することは、今考えても奇跡的なことだから。
しかし、全ての映画で描かれる〝他者の人生〟には、データや統計を超えた誰かの想いが世の中を変えることもあることを教えてくれる。だから映画を観ると、どんなに苦しくても、闇の中の小さな光に向かう勇気をもらい、その光を信じ抜く背中も押してもらえて、なんとか踏ん張ってこれた。我に返ると、よく16年間も踏ん張ったままでいれたなぁとも思うが、やはりひとりでは到底無理。全ては家族やスタッフ、そして足を運んで来てくれた皆さんのおかげだ。映画を観終わると、自分でも気付かなかった本当の自分が顔を出すことがある。そこで表面的ではない〝本音のあなた〟との出会いが生まれ、その出会いが最も大きなエネルギーになっているのだ。ただ映画を上映するだけなら、シネコンやサブスクでもいい。それならこの町で、こんな映画館をやる必要もない。深いコミュニケーションができる場だから続けてこられたのだと思う。感謝しかない。
誰かが「我々の人生においては、究極的には対人関係以外の悩みはないように思う。さらにそれらの問題は、我々が他者に関心を持っている時にだけ解決できる」と言った。対人関係の中に入っていけば摩擦は避けられないが、生きる喜びや幸せも、そんな対人関係からしか得られない。だからこそ、まずは他者の人生に関心を持つ(映画などを観る)ことを、いつでも忘れずにいたい。
いまだ戦争も終わらず、地球も悲鳴を上げている。お金があっても、食べ物がない時代になるかもしれない。今、地球に対して何ができるのか?も考えながら、今日も映画(他者の人生)を観て、自分のできることを実践するこの活動を、1日でも長く続けられたら嬉しい。
この奇跡が、いずれは軌跡となれるよう精進致しますので、これからも小さな映画館を何卒よろしくお願い致します。