

10月、三男が生まれた。
上の二人の娘のときはコロナ禍で立ち会いが叶わなかったが、今回は初めて出産に立ち会うことができた。
分娩台に上がるまでは待合室で待機。
「旦那さま、どうぞ!」
その声に胸がざわつきながら分娩室へ入ると、妻は必死に呼吸を整え、顔をゆがめながら踏ん張っていた。
「よし!エールを送るぞ!」そう思い、
そばで背中をさすり、妻の名前を呼んだりしてみる。
少しでも力になればと思った瞬間、
「なぁ、それやめてくれん!?」
と妻の出身地の岡山訛りで強めに返された。
余計なことをしてしまった…と何もできない自分が情けなくなる。それでも時間は静かに進む。
力むたびに小さな頭が見え始め、助産師さんの「もう少しですよ!」の声。
そして次の瞬間、ドゥルルン!と小さな体がこの世界に滑り込んできた。続いた「おぎゃぁぁぁぁあ!」という大きな泣き声に、胸の奥が熱くなった。
抱き上げた3200グラムの命は想像以上に重く、妻への感謝の気持ちが一気に込み上げてきた。
平成に生まれた僕らのもとに、令和の命がやってきた。この子はこれからどんな景色を見て、どんな人と出会うのだろう。笑う日も、泣く日も、悔しい日もあるだろう。それでも、どうかそのすべてを生き抜いてほしい。願いはただひとつ。どうか長く、健やかに。小さな指が僕の指をぎゅっと握る。その温もりだけで本当に幸せな気持ちになれた。


