
ついこの間12月だったのに、気付けばもう12月。時が経つのが早すぎる。オープンした頃は、10年後には経済的にも精神的にも少しは余裕ができるようにと頑張ってきたはずなのだが、なかなかそうはいかず17年経っても忙しくなるばかり。しかし全国で最も貴重な時間のひとつが、この映画館での時間なのだとも感じはじめている。それは、最も難しい事業のひとつがこの映画館経営だから。だからこそ見えてくる世界が確かにあるから。もちろん映画を観ることが最も大切。リアルタイムに生まれてくる映画たちを観ることが、未来の予見や、この激動の社会の中でいかに健やかに生きていくのか、その術(すべ)を教えてくれてるからではあるが、この映画館の最大の特徴は、皆さんがわざわざ話しに(会いに)来てくれることだから。それが〝場所〟というものの役目なのかも知れない。有名無名問わず、いろんな方が全国から来てくれる。この1年振り返るだけでも、グラミー受賞者でもある音楽家ファンタスティック・ネグリートのライブや高校生との交流、尊敬している画家の牧野伊三夫さんやマサイ族の長老、サヘル・ローズさんや垣添忠生医師など様々なプロフェッショナルな方の来館と交流や、本場のわんこそば大会など、、、山ほどあって書ききれないが、これから決まっている素敵なことも山ほどあって(伊藤ゴローさん、宮内優里さん、ミロコマチコさん、キセルなど)、ゆっくり振り返ることができないのも、幸せなことなのかも知れない。
わざわざ映画館まで話しに来てくれることが最大の特徴だと書いたが、もしそれが無ければ、シネコンやサブスクで映画を観ることと同じことになってしまう。作品を観て感じたことを誰かにアウトプットすることで、よりインプットされる体験こそ記憶に残るから。記憶に残るからこそ、語り継がれてゆく。それがいずれ名作になるのだ。ということは、もし今、誰にも観られてないのなら、どんなに名作だったとしても、作品として成立しなくなる。誰かに見られて初めて、作品として存在できるのだから。だから、今日も素敵だと感じる様々な作品をお届けする。それしかできないけど、それがとても大切なことだと、AIが進化するほど、そう感じているから。
今年も足を運んで下さったみなさまのおかげで存続することができました。みなさま、良いお年をお迎えくださいませ。そして、来年も小さな映画館を何卒よろしくお願いいたします。


