

岡山県で大学生をしていた頃。
期末テストを終えると、達成感と同時にひとつの感情が湧いていた。
「…日田に帰れる…!」
大分を離れ、九州を離れて暮らす中で、帰省はいつの間にか、僕にとって息がつける時間になっていた。
自宅に戻り、キャリーケースに荷物を詰め始めると、理由もなく口元が緩んでいる自分に気が付いた。
イヤホンを耳にはめ、大好きな音楽を聴きながらバスに揺られる。
岡山駅に近づくにつれて、胸の奥が少しずつ落ち着かなくなっていく。
新幹線に乗り込むとすぐに本を開いた。
活字に没頭している間は、「もうすぐ帰れる」という高揚感をやり過ごすことができた。
やがて博多に着き、ホームに降り立つ。
僕は毎回ここで1度深呼吸をする。
言葉ではうまく説明できないけれど、そこには確かに九州の匂いがあったのだ。
そこからさらにバスに揺られ、合計6時間ほどで日田バスセンターへ辿り着く。
久しぶりの町並みを眺めながら、懐かしいというより安心している自分に気付く。
「あぁ、僕の故郷はこんな感じだったなぁ。」
バスを降りる頃にはいつも夕暮れ。
17時のチャイムが町に響いた瞬間、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
一月。
帰省してくる友人たちと顔を合わせるたび、きっとみんな、同じような気持ちなのだろうと思う。
どうか、ゆっくり過ごしてね。


