「日田隠し」シリーズ⑤日田金の幻 日田は天の鷹と地の蛇が交わる地
「日田」という二文字を見つめていると、そこには古代人が残した一つの記号が隠されているように感じる「日」は太陽であり、天、火、陽の象徴である。そして空高く舞う鳥、その頂点に立つ鷹へとつながる。日田周辺には鷹に関わる伝承が残り、英彦山、田川、山鹿、阿蘇へと広がる鷹紋の世界とも、不思議なほど響き合っている。
一方の「田」は大地であり、水をたたえ、稲を育て、ミケ-街食を生み出す場所である。水と大地の神霊は、古代には蛇や龍の姿で表された。三輪山の大物主神が蛇神として信仰されたように、蛇は水、再生、豊穣を司る存在だった。
つまり日田とは「日=鷹・天・太陽・陽」「田=蛇・地・水・陰」という、二つの力が交わる場所ではなかったか。さらに「日」と「田」は、いずれも「口」の形を持つ。その中に「二」と「十」がある。これは、陽と陰、天と地が交わる暗号のようにも見えてくる。奈良の橿原考古学研究所は新聞で、「田」は日本最古の記号と発表している。そして、鷹の翼と蛇の身体が一つになった姿を思わせるのが、中国神話の「応龍」である。応龍は翼を持ち、水や雨を司り、王を助け、国づくりや治水に関わる神獣として語られた。「応龍」と「王龍」は、語源上は別の言葉である。しかし、王を導き、水を治め、国を守る龍ならば、象徴として「王龍」と呼びたくなる。
日田には中国から送られたと言われる龍を描いた古代の鉄鏡があり、筑後川と山国川という二つの「ミケ川」がある。その流域には古く「ミケ」の音を残す世界があり、鷹と女神の伝承も重なっている。二つの川が大地を潤し、田から食が生まれ、その上空を鷹が舞う。これこそ、天と地が結ばれる日田の姿ではないだろうか。日田が日鷹(日高)と呼ばれたのもその形跡か。
天の鷹と地の蛇が交わるとき、翼ある龍。一応龍という、龍の最終形がこの日田で生まれる。
卑弥呼の時代、中国の神仙思想と響き合う祭祀世界が、この日田にも存在したのではないか。そして、その象徴が五馬姫と久津媛であり、二人の深層には瀬織津姫にも通じる、水と大地の女神が眠っているのではないだろうか。私はそこに、これまで追い続けてきた「日田隠し」の、最も深い土台があるように感じている。


