一軒目で飲み終えてなかなかいい気分では居るもののもう少し楽しみたいのがお酒のみの性分と言うもので、もう一軒もう一軒とお店を巡ろうと隈の町をフラフラと歩いているとキングビルが目に入る。
そうだ今日は久しぶりにスナックcocoの純子ママの顔でも見て帰るかと中へと入って行った。
二階へ行くとカラオケの歌声があちらこちらから聴こえてくる。
今日も誰彼楽しんでいるのだと思えばホッとしてくるものである。
cocoの中へ入るとボックス席では団体客が楽しそうにカラオケを歌いながらお酒を飲んでいる。
カウンターに数席空きがあったのでそこへ腰かけるといつものように純子ママが出迎えてくれた。
おしぼりと小鉢を並べながら純子ママが「外は寒かったでしょ?今日は何を飲みますか?」と丁寧に聞いてくる。僕はウィスキーの水割りを注文してママとの会話を楽しむと目の前へウィスキーの水割りが出される。カラオケやら笑い声やらの中で賑やかであるがカウンターで会話を楽しめないほどうるさくはない。僕は一人でお酒を飲みながら純子ママへもお酒を勧める。時折カラオケを挟みながら飲んでいるとここでは一人で飲みに来ている気がしないほど純子ママやスタッフの人達は客へと気を回してくれる。
数杯飲んだところで場も温まり、気付いた頃には純子ママも日田弁交じりで身近な感じを出しながらも酌などのサービスの際には接客の丁寧さも忘れない絶妙なバランスである。そろそろキープのボトルも無くなりそうだったので、次のボトルも注文しもう一杯ママへと勧める。
このお店の空間はママやスタッフの気配りでバランスが保たれ多くのお客さんが居てもそれぞれが楽しめるのだと感心した。
僕は最後の一杯を飲み終え店を出ると店の外までママやスタッフさんが丁寧に見送ってくれる。
最初から最後までいい気分である。僕は階段を降り、またフラフラと隈の町を歩いた。