隈町公園で三隈川を眺めて夕涼みをしているとなんだか一軒のお店が目に入ってきた。隈町公園の向かいに在る中村家菓舗さんだ。和菓子屋となると旅先では入ってみるが、地元の菓子屋には滅多に入らない。僕は興味をそそられてちょっと中村家さんを覗いてみることにした。
店内にはそば饅頭やカステラや鮎の最中などが並び、その隣には小鹿田焼きの壷や皿も並んでいた。特に目を引くのはガラスケースにたくさん並んだカステラだ。このカステラだが一般的に売られているカステラより黄色味が濃いのだ。カステラを不思議そうに眺めていると店主が表へと出てきてくれた。そこで僕は色々質問をしていると中村家さんは昭和9年から91年間続いていて歴史のあるお店であった。昨今の工場生産になってしまったカステラと違い手作りのカステラであることも教えてくれた。
僕は早速カステラを半斤買い、他のお菓子も買って食べてみることにした。カステラには牛乳がほしいと近くのコンビニで買い、隈町公園で実食に入った。中村家さんのカステラは手に持っただけで重量感がそこらのカステラと違うのが解る。一口食べれば卵や蜂蜜の濃厚さも全然違う。そして底にあるザラメがなんとも味わいを出してくれている。ため息が出るほど一つ一つが濃厚な美味しさなのだ。僕としては日本で一番おいしいカステラだ。他のお菓子もいちいち美味しく一口食べては唸っていた。
日田は歴史も古いので、このようにたくさんの文化が根付いては居るが、その継承者が居らずに途絶えてしまう恐れがある話を思い出し、こんな美味しい物は無くならないでほしいなと思い、途絶えず流れている三隈川を眺めながら中村家さんのカステラを頬張った。
美しい景観と、美味しい物が溢れている日田市は感動に出会える素晴らしい町だと感慨に浸りながら僕はまたふらふらと歩きだした。
【オヤ侍コラム】 橘 六六六 中村家菓舗