暑い日々が続くのでなかなか外出するのも億劫なのである。外へと出たい気持ちはあるがこうも暑いと体力気力共に疲労が溜まってきている。しかしながら冷房の中でゴロゴロしているのも健康的とは言えない。こんな時は自然の中に在る涼を求めるのも良かろうと思い出向いてみたのは天瀬町の桜滝、天ヶ瀬駅傍の陸橋下へ行くと桜滝の看板が在る。近くに駐車場も在るので気にはなっているが寄ったことのない人も多いのではないだろうか。
看板から陸橋下をくぐり、遊歩道を歩いていくと日常から分断されたかのように急に大自然が広がる。近くに通りは在るのだが静けさが広がってくる。小川沿いを歩きながら統一されていない樹々の間を歩いていると然も大自然へと迷い込んだ気色になってくる。芝生を張った広場を横目に抜けるとババババッと水が跳ねる音が聞こえてくる。心なしか少し涼しくなった気さえする。
案内板を過ぎ、木陰を抜けるとそこには桜滝が激しく音を鳴らして水を水面へと叩きつけていた。細かくなった水しぶきが優しく肌へと触れて涼しさを感じさせる。「砕け散ること花の如く、流下することすだれの如し」と言うだけあってなんとも言えない大自然の風情の中へと僕は迷い込んだようだ。しぶきを上げる滝に樹々の間から差し込むように力強い太陽の光が差し込み照らしている。僕はこの景色の中の一つとして溶け込んだ気持ちになり、暑さを忘れて見とれていた。しばらく無心で眺めると何か色んなものが洗い流された気がしたので僕はスッカリ気分よく帰ることにした。少し足を伸ばせばこの様な大自然の中で過ごせる日田の懐の深さに感心しながら歩き始めた。当たり前に思ってしまうが、この様に文化にも自然にも気軽に触れ合えることは大変ありがたいことだ。そしてそれへと簡単に触れ合えるように整備が整っていることも。僕は日常の『有難い』ことに触れながらまたふらふらと歩き始めた。
【オヤ侍コラム】 橘 六六六 桜滝