今年は終戦から80年。毎年、8月に戦争を考える作品を必ず上映してきたが、80年というと、当然だがあの頃10歳だった方は90歳になる。以前ココでも書いたが、あの時代を実際に体験した方々の取材を!と思う気持ちが、止まらない。新聞社でも市報でもいいので、そんな先輩たちを取材し、記録したい。そんな想いが込み上げてくる。日本で実際に戦時中を体験された方の話が聞けなくなると、(映画の中だけの世界のように)戦争は想像上のものでしかなくなってしまう。そうなったら〝忘れた頃にやってくる〟、また戦争が起こってしまいかねない。
さらに、世界中の多くの映画が〝反戦〟の立場で作られ、今この瞬間にも多くの戦争映画が生まれている。それほど、映画の世界では常に〝反戦〟の意識は強く、皆さんも多くの作品を目にしているはずだが、それでも戦争は終わらないから不思議でならない。そればかりか、至る所で始まってたりする。ニュースが耳に入ってくる度、無力感で呆然としてしまうが、そんな時もこれまで観てきた映画たちが、登場人物たちが諦めない心を引っ張り上げてくれるから、なんとか踏ん張れている。そして同時に「平和というものは、不断の努力によって保たれているのだ」と再認識させられる。
今年は、朗らかで強く優しいすずさんにまた会える。『この世界の片隅に』を上映するのだ。9年前に上映した作品だが、今観るとまた違ってみえることに驚いた。これも映画の醍醐味ではあるのだが、やはり社会自体があの頃よりもずっと戦争に近づいてきていると確かに感じはじめ、涙が止まらなかった。このありふれた日常は、アッという間に変わってしまう可能性があり、取り返しのつかないものになる可能性だってある。だから私たちは、戦争に向かう物事に対して監視を忘れず、大切な人が悲しい想いをしないように平和を維持していかねばならない。必要なら声をあげて。これは大人の義務ですね。
いずれ、わたしたちもいなくなる。どんな日常も永遠には続かないからこそ、ありふれたこの日常を美しく感じ、大切にしながら過ごしていきたい。そして、そこに戦争はいらない。