
○ 前津江町 ○40歳 ○鹿ファーム 代表/日田市有機農業研究会 代表/前津江こどもがまんなかネットワーク 代表 ○神奈川県藤沢市 出身 ○循環型農業探究家 鹿野 翔
前津江町で『循環型農業』に取り組む鹿ファームの鹿野翔さん。今まで廃棄されていた地域の資源を利用して堆肥をつくり、土壌を改良し、野菜やお米を育てます。そして地域の方々や子どもたちとその豊かさを分かちあう。ほんの数十年前はあたり前だった循環型社会はエネルギーと日本の経済発展により大きく変化し、子どもたちの未来を脅かすのではないか…そんな不安をも抱きながら、鹿野さんは日々環境に寄り添い、食だけでなくわたし達の生活に真剣に向き合います。
「僕が環境について初めて意識をしたのは小学生の頃の環境の授業で地球温暖化の話を聞いた時でした。『どうして大人はここまで放置してたのか?』と疑問に思いました。出身の藤沢から九州に来たきっかけは大学(農学部)進学で、砂漠化の勉強をしましたが、日本の食料自給率の低さ、海外への依存がその一因となっていることに気づきました。その後筑紫野市の有機農家の八尋幸隆さんとの出会いで、農業で問題解決できるのではないかと思い、有機農業そして循環型農業への関心が高まりました。農福連携施設や由布市のほおのき畑で就農し、その後佐伯で地域おこし協力隊として『菌ちゃん農法』(吉田俊道氏が提唱する化学肥料や農薬を使わず、糸状菌などの微生物の力を借りて生ごみなどから野菜を育てる農法)の普及活動に携わりました。2019年から前津江町の地域おこし協力隊として3年間勤めたのちに、『鹿ファーム』を始めました。前津江では最初から有機農業に取り組んだわけではありません。地域の高齢者が作っている野菜の販売状況をデータ化したところ、売れ残りが多いことが判明しました。そこで野菜の付加価値をつける目的で、前津江の牛糞、そして椎茸の廃菌床などを利用した堆肥づくりを始めました。輸入肥料に頼らず、地元の未利用資源で堆肥をつくり、それが野菜を美味しく育てます。良い野菜は売上にも繋がりますし、そもそも野菜づくりはおばあちゃんおじいちゃんたちの生きがいでもあります。この循環型農業が土、野菜、そして地域の人たちを元気にするんだと思っています。2020年に地域の有志の方々と『憩いの杜やませみ』というお店をオープンし、軽食や人気の蓬饅頭『よもやまん』をはじめとする加工品の生産販売に加え、先ほど紹介した堆肥「カウマッシュ」の普及にも取り組んでいます。」

「毎年11月に開催されている『千年あかり』で使用した竹灯籠を再利用して竹炭を5トンほどつくり、畑に埋めています。竹が溜め込んだ炭素を炭にすることで、炭素分を千年ほど閉じ込めることができ、大気中の二酸化炭素を減らすことができます。…と言っても排出量に比べると微々たる量なんですけど…それでも一人でも多くの人が家庭などで使ってくれればと思います。現在、日田市ではバイオマス資源化センターの廃止を受けて、生ごみの堆肥化の可能性も模索しています。去年実証実験を行い、前津江約50軒分の家庭生ゴミと、給食センターの残渣を回収して堆肥一山分を作ることができました。ただこれには生ごみの鮮度を保つ必要があることや、回収に労力がかかることなど、継続は現実的には難しいのですが…各家庭で市が配布している段ボールコンポストなどで家庭ゴミを堆肥にしてプランター菜園に利用したり、多くの方の小さな行動が大切です。一緒に考えてくださる方募集中です!意識という意味で食品ロスにおいても、かなりショックを受けました。環境省によると、令和6年の食品ロスは461万トン。それに対して、お米の生産量は、734万トンと、苦労して作っても捨てられている食べ物があることが非常に残念です。現在こども園や小学校での農業体験、大人向けの講習会などを行っています。子どもたちが『菌ちゃーん菌ちゃーん』と呼びかけるとスクスク上手に育つことがわかったし(笑)、いろんな農法を探ることは自分も勉強になっています。活動にはチームの存在は不可欠ですし、まだまだ模索中のことも多いですが、小さな循環の輪が各地に生まれ、広がっていくことが理想だと思っています。僕が子どもの時に感じた『なぜ大人はここまで放置してたの?』という不安を今の子どもたちにして欲しくないです。限界を感じることもあります、ただ子どもたちの未来のためにもこの活動を続ける必要があると思っています。」
Vol.98 UNDER THE SAME SKY
Photo by Cotaro Ishii
Text by Yu Anai


