母の眼鏡を持って旅に出た。
一緒に見たかった景色をカバンの中の母と見てまわった。海の香りのする川で夜景を眺めていると、どこからともなく飛んできた鳥が、目の前の欄干にとまった。
少しやせっぽちの鷺
母だと瞬間的に思った。
ずーっとずっとだいすきだよ
ハンス・ウイルヘルム(絵と文)
久山太市(訳)
評論社(出発社)
エルフィーは、世界で一番素晴らしい犬。
ぼくは、エルフィーといっしょに大きくなった。ぼくの背がぐんぐんのびるあいだに、エルフィーは、どんどん年をとって、そのうち寝ていることが多くなり、散歩も嫌がるようになった。そしてある朝、目を覚ますと、エルフィーが死んでいた。悲しくてたまらなかったけど、いくらか気持ちが楽だったのは。毎晩エルフィーに「ずーっと、だいすきだよ」と言っていたから。
小学1年生の国語の教科書にも採用されているこの絵本は、いつかはやってくる死を嘆くことではなく、思い出が悲しみを癒し、慰めをもらたせてくれると教えてくれます。
体調を崩して、入院した母とはこの1ヶ月、私も弟も何度も面会ができた。好きなお菓子もこっそり食べさせて、次に来る時は鰻を持ってきてねと弟と約束して、翌朝、静かに息を引き取った。
棺の中に、鰻のお弁当を持たせて、私たちは笑顔で母を見送った。
大好きな人には、ちゃんと大好きだと言葉で伝え、行きたいところへは一緒に行って、食べたいものを食べ、たくさん笑って過ごしなさいと、鷺が話しかけたような気がした。