

「たくが、8年ぶりに東京から帰ってきているらしい。」
年末、友人との飲みの席でそんな話になった。
久しぶりに会ってみたいなぁ。
8年ぶりの故郷は、彼の目にどう映るのだろう。ずっと日田にいる身として、
時間と彼、その両方が気になって仕方なかった。
年が明けて1月2日。
23時過ぎ、電話が鳴った。相手はたくだった。
隈町にあるBarで待ち合わせ。
オレンジの光がほのかに揺れるカウンターで横並び。
ロックグラスを傾けながら、静かに乾杯をした。
「8年ぶりの日田、どうやった?」
返ってきたのは、
サンリブが無くなっていたことや、スタバができていたことへの驚きくらい。
拍子抜けするほど、穏やかな答えだった。
話を聞いていくと、
たくは今回、友人と会うのを控えて、
家族との時間を大切に過ごしていたことが分かった。
昼は家でゆっくり過ごし、夜になると父親と毎晩お酒を飲み、たくさん話をしたのだそう。
コロナ禍やいろんな事情が重なって、帰るタイミングを逃してしまっていた彼。
8年ぶりの帰省で彼が強く感じたのは、街の変化よりも、家族が心から喜ぶ姿を見て、
「申し訳なかったな」という気持ちだったのだそう。
夜も更けた帰り道、
彼はぽつりとこう言った。
「来年も帰れるようにしたいなぁ。」
その言葉を聞きながら、
いつも家族の近くにいる自分は、
当たり前のように過ごしているこの日常を、ちゃんと大切にできているのだろうかと、足元を見つめ直した夜だった。


