まな板のトントン
鍋のぐつぐつ
フライパンのシャー
雀のちゅんちゅん
母が朝ごはんを作る音で目を覚ます。
台所に立っていると、あの頃の母と同じような音がして、子どもの頃の懐かしい朝の音の風景を思い出す。
ここ数年、起きてすぐにテレビをつけなくなったら、朝の音が聞こえてきた。
みみをすます
谷川俊太郎 詩
柳生 弦一郎 絵・装本
福音館書店 出版
やさしい言葉を紡ぐ谷川俊太郎さんの長編ひらがな詩
人の心にそっと入りこむ和語のしなやかなリズムは、目で追うだけでその情景が浮かんできそうです。
私は、何を焦っていたのだろう。
すぐに結果のでないことや、手間のかかることが、途方もなく長い時間のように思えて、合理的な道具を探し、簡単に手に入るたくさんの情報と引き換えにいろんな音が聞こえなくなっていた。
それを意識して、手放した瞬間から、また音が聞こえはじめた。
鳥や虫の音
雨音や風の音
そして
自分の声にみみをすます。
たとえ成果がでなくても、思い通りにならなくても、最後に意味を持つのは、結果ではなく自分の声に耳を澄ましたかどうかということではないだろうかと思う。